あなただけを、愛してる。



あれから特に変わったこともなく過ごしているけれど、一つだけ気になることが起きた。


最近、帰り道に誰かにつけられているような気がする。


まだ気のせいかもしれないという段階で少し怖いけれど誰にも相談できずにいた。


そんな中、久しぶりに残業で10時をまわってしまった。


オフィスにはもう誰も残っておらず、しんと静まり返っていた。





「…ゆいこ?」


小さな声に驚き振り返るとそこには社長がいた。


「まだ残ってたのか。」


社長と話すのはあの彼が好きだと言ってくれた日以来で少し緊張する。


「はい、気づいたらこんな時間でした。」


小さく笑いながらそういう私に社長は近づいてくる。


「もう遅いからほどほどにしろよ。」


やさしい、彼の声。
彼の私をとらえた瞳から視線を離せない。


「…なんで、こんなに好きなんでしょうか。」


小さくつぶやいた私をそっと彼は抱きしめてくれた。





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