1弦の先を、君と。
確かに鳴ったはずの朝を告げる電子音は
俺の手一つで簡単に止まってしまう
もし何度止めても繰り返させる目覚まし時計があるのなら
「マジやべぇッ!」
こんな状態にならずに済むんだけどなぁっ!!
新学期早々遅刻は不味い
「太輔!やべぇのはいいから足を動かして!」
「全力注いで動かしてるっ!」
俺の斜め前を行く自転車
年季がかった塗装が視界で左右に大きく揺れる度
やはり罪悪感が拭えない
彼の名は、横尾渉
俺達は、幼稚園からの幼馴染み
渉の方が一つ年上だけど、俺は兄弟の中で長男
渉は一番末っ子ということもあり、お互いが同級生のように接し合ってきた
今では親友と呼べるほど、大切な存在
そしてもう一つ
同じ学校の『先輩』と『後輩』
この春、俺は渉の通う県立高校に入学した
...のはいいんだけど
小学校中学校では別々だったので
やっと同じ学校に通える喜びを感じながら
一緒に登校する約束を固く結び
新学期を爽やかに迎えるはずだったんだ
俺が寝坊という失態をしでかさなければ。