1弦の先を、君と。
「入学式の日は起きれたの!?」
「車だったから間に合ったんだよ!」
「待ち合わせ時間に合わせて早起きしようとか思わないの!?」
「目覚ましが勝手に止まったの!」
「止めたの太しゅけでしょ!」
「噛んだ!」
「うるしゃい!」
下り坂に差し掛かったところで
こぐスピードを地面と風に任せながら
渉が文句を言ってきた
そりゃ俺が悪かったよ
待ち合わせ時刻丁度に目が覚め
渉まで遅刻のレッテルを貼ってしまいそうなのは
間違いなく俺が悪いんだけどさ
少し緩くなる坂道
復活した体力でまた足を動かす
ここまで来てやっと気が付いた
車できた時は分からなかった
桜だ
学校へと続く一本道は、まるで自分達が作り上げているんたとばかりに咲き笑う、桜
満開とはまだ言えないが、小さな蕾が所々から顔を見せる姿がまた愛らしくて...
「ん?あ!学校見えてきた!渉!」
「...よく見てごらん。誰が見える?」
「...先生立ってる」
「太輔、一緒に怒られよう」
厳つさを固めたらこうなった、と言っても過言ではない顔付きをした先生が立って
こちらに鋭い視線を送る
「最悪だぁ...」
心躍り、明るく色づくはずの新学期
こんな始まりで
この先上手くやっていけるのだろうか...