1弦の先を、君と。
chord G
全速力の自転車と、朝っぱらからの説教により
体力・気力諸共奪われ、脱力したまま教室へ向かう
HR終了と同時に入れば
入学式には無かった賑やかさに迎えられた
あちこちで広がっている人の輪
そんな状態に出会すと焦るもので
俺も早く話せる奴作らねぇとな
そんな事を考えながら
まだ慣れない足取りで自分の席へ向かう
窓際に位置するその席は
教室全体を見渡すのに都合がいい
教卓前に集まり話を交わす人
次の授業の準備を始める人
2つある入り口と廊下を挟み追いかけあっている人
カバー付きの本を広げ静かに読書を始める人
一つの机に群がりやけに盛り上がってる人
中学からの友達でもいれば話しやすいのに
新しい環境に上手く馴染むまでが難しい
人見知りがちな俺にはより一層困難だ
誰かに話しかけようか...
誰か...
だれ、
「...っと!...ちょっと!藤ヶ谷さーん!」
「うわっ!」
耳元で大きな声が聴こえた
「さっきから話しかけてるのに無視してひでぇなぁ」
「...なんで馬がいるの」
「おんなじクラスだから!あ、あと馬面な人に馬呼びはキツいから」
いた
同じ中学出身の奴
「あれ?郁人、入学式いた?」
「いたよ!俺はずっといたわ!」
コイツは、河合郁人
中学からの友ダチ...馬ダチだ
それにしても本当に気が付かなかった
この高校を受験したとは知っていたが
まさか同じクラスになるとは
「で、新学期早々遅刻ー?」
「そんなとこ」
「太ちゃんも落ちぶれたことー」
「太ちゃん呼び止めて」
「ついうっかり」