Tokyo Dark Side
「……」

耕介は、思い詰めたような顔をしている。

以前は、雛罌粟が自分の性癖の話をすると、呆れたような顔をしていたものだが。

今日は眉間に深い皺を寄せている。

心配してくれているのだろうか。

(私みたいな汚れた女の事を…)

口では雛罌粟の事を、ヨゴレだの売女だのと貶す耕介。

しかしあまり表情には出さないものの、時折雛罌粟が傷ついた顔をすると、耕介は『しまった』という表情を見せる。

…その夜の耕介の愛し方は、決まって優しい。

売女を抱く時の接し方とは思えない。

欲望を吐き出す為だけの触れ方ではない。

愛おしむように、愛でるように。

それを恥じるように、事が終わった後はおどける。

『今日は最高に具合がよかった』なんて、下品な事を言ってみたりする。

優しさを隠すかのように。

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