Tokyo Dark Side
2人きりになった探偵事務所に、静寂が訪れる。

所在なさげに、椅子の背凭れをギシギシと鳴らす耕介。

雛罌粟もまた、耕介に背を向けたままソファに座っている。

「…腹、減ってるか?」

唐突に耕介が言う。

「何か…食いに行くか?」

「……」

雛罌粟は首を横に緩々と振る。

「そうか…」

今まで雛罌粟が何度レイプされても、慰めの言葉なんてかけた事がなかった。

コイツはこういう女だから、犬に咬まれた程度にしか思っていない。

だから慰めは要らない。

…事実そうだ。

雛罌粟は今回の事も、犬に咬まれた程度にしか思っていない。

…なのに耕介は、雛罌粟を気遣う。

今日に限って彼女の体を心配する。

それは、雛罌粟が耕介を庇って、あのチンピラ達相手にされるがままになっていたからか。

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