Tokyo Dark Side
真っ白なシーツが、何枚も干してある病院の屋上。

「いい天気だ、こりゃあ洗濯物がよく乾く」

口に煙草を咥え、呟く巽。

「で…」

彼は振り向いた。

「何しに来た、人殺し野郎」

「随分な言い草じゃねぇか」

巽言う所の人殺し野郎…松岡 雄作はニヤリと笑う。

「たまたま象男に襲われてる所を助けたんで、心配して見舞いに来てやったっていうのによ。見舞いついでに…」

松岡は左拳を握り締めた。

「暗殺者の俺の顔を見られたからにゃ生かしておけねぇから、殺りに来たんだけどな」

暗殺者に限らず、犯罪者は面が割れるのを嫌う。

公安の永瀬が追っている国際的テロリストの八戸 由岐(はちのへ ゆき)も、世界中にその名が知られていながら、素顔は世界各国どの情報機関にも知られてはいなかった。

事実、八戸 由岐がまだ若い、しかも目撃当初10代の少女である事も、遭遇した永瀬の口から初めて語られる事となったのだ。

それ即ち、八戸の目撃者は全て殺害されてきたという事に他ならない。

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