『忍姫恋絵巻』
①才氷、今日から影武者になるの巻
時は、徳川将軍家が日本を統治する『江戸時代』。
伊賀一のくのいちであるあたし、服部才氷(はっとり さいひ)は、次期頭領となるため江戸へ修行へ来ている。
伊賀の里を出て数刻。
まずはとこで路銀(ろぎん)を稼ごうかな…。
下手したら、今日の寝床も確保出来ない!!
「父上の子供不幸モノ!!何が可愛い子には度をさせ、よ!!」
路銀も何も無しに里を放り出すなんて、親のやる事!?
父上、今、徳川の忍びとして役目を果たしてる。
いずれ、あたしも徳川に仕えるらしいけど、その為には修行が足りないからって、家を追い出された。
だから今は、忍装束ではなくて、町娘の格好をして、江戸の町にいるんだ。
生まれつきの青の瞳に、長いまっすぐな黒髪をひとつに結って、江戸の町をふらふら歩く。
「江戸のお偉いさんにでも雇ってもらうかなぁー」
そんな事を考えながら、江戸を散策すると、やっぱり自然にあふれた里に比べて、にぎやかだなと思う。
「お姉ちゃーん!!」
「うん??」
突然、呼び止められ、振り返ると、一人の女の子が駆け寄ってきた。
あれ、江戸に知り合いなんかいたかな??
まぁ、いっか!
笑顔で女の子の視線に合わせてしゃがみ込む。