『忍姫恋絵巻』
「服部 才氷、織田から手を引け」
「織田……やっぱり織田が絡んでたか。才氷から早く離れろ!!」
ボワッと、赤の腕にも炎が纏った。
そして、鋭い瞳で先崎を見据える。
「私は、お前達を殺す気は無い。優秀な忍の血を絶やしたくはないからな」
先崎の言いたい事は分かる。
それは、あたしたちだって否定する理由は無い。
でも……。
「そう言いながら、先崎はあたしを脅してるじゃん」
「?」
あたしの言葉に、先崎は首をかしげた。
あたしにその手を構えて、断れば、迷いなく力を使おうとしてる。
「忍びの未来を説きながら、壊そうとしてるのは先崎も同じだと思う」
あたしは、先崎をまっすぐに見つめる。
それに、先崎は驚いたようにあたしを見つめた。
「私も…そうだな、お前の言う通りだ。私は、そう願いながら、結局この道を進むしかないのだ」
「それはどうして?」
「八雲家は、織田に滅ぼされ、今や奴隷だ。歯向かえば、すぐに里は燃やされるだろうな」
「っ!!」
先崎は、あたしと同じなのかもしれない。
織田に、大切なモノを奪われた。
「お前とて、同じだろう。織田に桜牙門を滅ぼされた。なのになぜ、織田に歯向かおうとする。あれは修羅だ、修羅の鬼なのだ。全てを奪いつくし、滅ぼすまで止まらん」
その瞳は、すでに何かを諦めてしまったかのように思えた。