『忍姫恋絵巻』


「あたしの中には、信秋への憎しみしかない。だから、織田につくくらいなら、きっと自分の命を絶つ」

「そうか……」


あたしが一通り話終えると、先崎は目をつぶり、そっとあたしから手を離した。


「先崎……?」


あたしを解放してくれた。
急に、なんで………。


「絶望しても、忠義を忘れずに戦うお前は、誰よりも気高い」

「え…?」

「私には、お前のように心から仕えたいと思える主には出会えなかったからな。そうか。だからこそ、お前は強いのだな」


するとなぜか、先崎は穏やかな笑みであたしを見つめた。



先崎??
さっきまで、あたしを殺そうとしてたのに、なんで??












< 102 / 272 >

この作品をシェア

pagetop