『忍姫恋絵巻』
「信秋様は、お前に心底執着しておられる」
「信秋……」
信秋は、あたしの苦しむ顔が見たいんだ。
『お前のその表情だ、その絶望した目が見たかったのだ!!』
狂ってる、そう思った。
在政様を失って絶望するあたしを、さぞ愉快に笑いながら見つめていたのを覚えてる。
「お前の砕いた槍も、信秋がお前の大切な人間の命を奪ったモノだからって渡したんだぜ」
五右衛門は、そう言って眉間に皺を寄せる。
「俺はな、そこの先崎のオッサンに借りがある。だから織田についてるが、忠義を誓うのはゴメンだな」
五右衛門は、先崎の為に織田についてるの?
それに、先崎も里を守るためについてるだけで、心はそうしたいとは思ってない。
「服部 才氷、信秋様はお前が苦しめる為の策をいつくも練ってくるだろう。お前がいる事で、徳川にも危険が及ぶかもしれん」
「それはっ…」
それは、考えないわけじゃなかった。
信秋は確実に家光を狙ってきてる。
それは、少なからずあたしも関わっているかもしれない。