『忍姫恋絵巻』


「才氷のせいじゃない、少なからず織田とはぶつかるはずだった」


すると、あたしの前に赤が立つ。
そして、あたしの手を握った。


「徳川は、信秋の目にもとまるほどに力をつけた。遅かれ早かれ、こうなってたんだよ。だから、才氷のせいじゃない」


「赤……」


赤は、あたしのせいじゃないって言うけど…。
信秋があたしに執着してるって、先崎と五右衛門が言ってるんだ。


信秋の近くにいた2人なら、あの男の残虐さをよく分かってる。



だからこうして、敵のあたしに忠告してるんだ。


「赤の言葉は嬉しいよ……」

「才氷?」


あたしの言葉に、赤は不安そうな顔をする。
あたしは、赤の手を握り返して、まっすぐに赤を見つめた。


「でも、あたしは誰よりも、信秋の恐ろしさを知ってる」


理由は何でも良いの。
ただ、誰かの苦しむ顔がみたいだけ。
その為なら、その人の大切なモノ、居場所までも全てを壊すんだ。












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