『忍姫恋絵巻』


「あいつは奪うよ、あたしの大切なモノならなおさら」

「何でだよ、何でそこまで信秋はお前に執着してんだよ?」


何で...。


何でだったかな、あたしが在政様の忍びだったからなのか。
それとも、在政様があたしの主だったからなのか...。


信秋の真意はわからない。


あたしと在政様が出会わなければ良かったのか、そう思ったこともあった。


「ただ言えるのは、信秋はあたしと在政、そして桜牙門に執着してるって事だけ。あんな奴の考えなんて、あたしにも分からない」


あたしは、きっと永遠に信秋から逃げられない。

それに、悔いを残して命を落とした在政様も、報われない。


「あたしにとって、家光や赤、春日局様とか、徳川が大切な場所になってしまった時点で、信秋はそれを壊しにくる。先崎の言ってる事は間違いじゃない」


主なんてもたないはずだった。


なのに、いつの間にか、あたしは家光を守りたいって心から思ってしまったし、ここにいる事が自然に思えるくらいに、自分の居場所になってた。









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