『忍姫恋絵巻』


「先崎、あたしは徳川から手を引くことにする」

「それがかしこい選択だろう」


先崎はホッとしたように頷いた。


「だけど...」

「?」

先崎は怪訝そうにあたしを見る。


「あたしは徳川からは手を引くけど、桜牙門からは手を引かない」


あたしの言葉に、先崎は目を見開いた。


「あたしは、主を守るなんて言ったけど、その命も、居場所も、誇りさえ、何一つ守れなかった...っ!!」


やば、体が痺れてきた...。
薬が効く頃だったの、すっかり忘れてたみたい。


「桜牙門は、お前にとって譲れないものなのだな」

「うん、例えそれで、先崎達と戦うことになっても、あたしは迷わず剣をとらなきゃなんない」


できれば...。
先崎や五右衛門とは戦いたくない。

もしかしたら、分かり合えるかもしれないから。






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