『忍姫恋絵巻』
「あたしは……」
赤の事が好き。
きっと、あの口づけから、もう恋に落ちてた。
でも、その気持ちを口に出すのは無責任だよね。
あたしは、赤から離れなきゃいけない。
傍にいても良いって、そう言ってくれただけで十分だよ。
「才氷ー!!」
何て答えようか考えていると、前から家光が走ってきた。
その姿は、まるで女中のような姿だ。
「家光…その格好…」
「大奥で火が上がったって、才氷が心配で来てしまったの。それにしても、才氷具合が悪いの!?」
泣きそうな顔であたしを見つめる家光に、あたしは笑う。
「家光の……その笑顔を見たら……元気になりましたよ」
不思議、家光はあたしを温かい気持ちにしてくれる。
強いあたしで、いさせてくれるんだ。
「才氷……なら、つきっきりで看病するわ!」
意気込む家光を見て、あたしは決心する。
まっすぐにあたしを信じてくれる家光に、あたしは隠し事ばかりだ。
今のあたしが好きだと言ってくれた家光に、あたしも向き合わなきゃ。
傍を離れる前に、あたしの事を話しておこう。
「その前に、聞いてほしい事があります。赤と、春日局様にも」
「呼んだか」
そう言って現れたのは、春日局だった。
「話はいいが、才氷を部屋で休ませてやれ。それから聞く」
そして、春日局は先導するように先に歩き出す。
そして、春日局の言う通りに、あたしの部屋に皆で向かうことになった。