『忍姫恋絵巻』



部屋につくと、家光があたしに白湯を飲ませてくれる。


「ありがとうございます、家光」

「何を言うの、才氷は私の大切な友達なの!当たり前の事だわ!」


そういう家光に、やっぱりあたしは笑ってしまう。
温かいなと思った。


「赤…怪我は大丈夫なの」


さっき、結構怪我してたし。
それなのに駆けつけてくれたんだけど、大丈夫かな。


「浅い傷だから、心配すんな」


そう言って赤は、あたしを安心させるように笑った。


「まず、報告からだ。赤、お前から話せ」


春日局は、あたしの真横に胡座をかいて座る赤に、視線を送った。


「織田の忍びが2人、大奥に潜入してました、のち石川五右衛門が家光様を襲った張本人ですね。もう1人は、八雲 先崎という忍びでしたよ」


「それらは仕留めたのか?」


その言葉に、赤は首を横に振る。


「石川と八雲は、織田に忠義を持っていません。うまくいけば、こちら側につけられるかもしれませんね」

「面白そうな話だな」


そう言って、春日局はニヤリと笑った。


「ただし、それには八雲の里を守るために織田から取り返す必要があります」

「ほう、それが八雲の織田に握られた弱味か。わかった、家光様、大臣と織田の処遇について後で話し合いましょう」


春日局の言葉に、家光は頷いた。


「織田は、平定されようとしている今の日の本に、また戦乱を呼び起こそうとしてるのだわ。許せない!」


家光は、真剣な瞳で春日局を見返した。











< 113 / 272 >

この作品をシェア

pagetop