『忍姫恋絵巻』
部屋につくと、家光があたしに白湯を飲ませてくれる。
「ありがとうございます、家光」
「何を言うの、才氷は私の大切な友達なの!当たり前の事だわ!」
そういう家光に、やっぱりあたしは笑ってしまう。
温かいなと思った。
「赤…怪我は大丈夫なの」
さっき、結構怪我してたし。
それなのに駆けつけてくれたんだけど、大丈夫かな。
「浅い傷だから、心配すんな」
そう言って赤は、あたしを安心させるように笑った。
「まず、報告からだ。赤、お前から話せ」
春日局は、あたしの真横に胡座をかいて座る赤に、視線を送った。
「織田の忍びが2人、大奥に潜入してました、のち石川五右衛門が家光様を襲った張本人ですね。もう1人は、八雲 先崎という忍びでしたよ」
「それらは仕留めたのか?」
その言葉に、赤は首を横に振る。
「石川と八雲は、織田に忠義を持っていません。うまくいけば、こちら側につけられるかもしれませんね」
「面白そうな話だな」
そう言って、春日局はニヤリと笑った。
「ただし、それには八雲の里を守るために織田から取り返す必要があります」
「ほう、それが八雲の織田に握られた弱味か。わかった、家光様、大臣と織田の処遇について後で話し合いましょう」
春日局の言葉に、家光は頷いた。
「織田は、平定されようとしている今の日の本に、また戦乱を呼び起こそうとしてるのだわ。許せない!」
家光は、真剣な瞳で春日局を見返した。