『忍姫恋絵巻』
⑥桜の記憶語りの巻


3年前。
それは、桜が舞うような温かい春の季節。


桜牙門の領地にある桜の木の上で昼寝していたあたしに、突然に訪れた出会い。



「くだらない」


全部がくだらない、次期当主が何??

服部の忍の家に生まれてからというもの、あたしはいつも誰かの期待に押し潰れそうだった。



服部家は、代々氷術を受け継ぐ徳川の忍びの家系で、今は父上がその認についている。


あたしは、その決められた運命が嫌で、修業をサボってよく、桜牙門の桜の木で昼寝をしていた。



「眠い…ふぁ…あっ!?」


ズルッ


お、落ちる!?


あたしは気を抜いたせいで、そのまま桜の木から滑り落ちる。


なーんてね!!


「よっと!」


体を回転させて、クルッとそのまま綺麗に着地した。


パチパチパチ

すると、その瞬間、誰かの拍手が聞こえた?



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