『忍姫恋絵巻』
「へぇー、そんなに珍しいモノでもないけどね」
忍びなんて、表だって活動してないだけで、五万といる。
「それに、とっても可愛い女の子の忍びなんて、そうそういないんじゃないかな」
「はぁっ!?」
突然の爆弾発言に、あたしは目の前の青年をガン見した。
可愛い女の子!?
忍びのあたしにそんな事言う人、初めて会ったわ!!
「はは、そんなに驚くことかな?」
驚いてるんじゃなくて、困惑してるんだけど!!
青年は苦笑いしながら、あたしが昼寝していた桜の木の下に腰を下ろした。
「……君は、ここがどこだか知ってる?」
「桜牙門の城」
あたしはサラっと言い放つ。
だって、ここの桜が一番綺麗なんだもん。
侵入くらい、多目に見てほしい。
「普通だね」
青年はまた笑った。
不思議…この人の笑顔は、心を温かくする。
「私は、桜牙門当主、桜牙門 在政。君の名前は?」
「桜牙門当主!?」
まさか、城主に侵入したのがバレた!?
まずったなー、まぁ、逃げればいいか。
ぜったい、あたしの方が足早いし。