『忍姫恋絵巻』
「家光様は狙われている。だから影武者を立てる必要があったのだよ。偶然にも、お前の顔立ちは家光様にそっくりでな」
へぇ…。
あたしの顔、そんなに家光様にそっくりなの??
「そこで、お前には家光様の影武者になってもらう。それに、時期服部家を継ぐ、くのいちなら、能力的にも申し分ないからな」
確かに…確かに、服部家は徳川に仕える忍。
でもあたしは……。
『……様……。あなたの忍として、私の一生を捧げる事を誓います』
桜舞い散る中で、生涯ただ一人を主として決めた人が、あたしにはいた。
『……笑っ…て…才氷…』
血まみれのあの人は、冷たくて、血の気の失せた手で、あたしの頬に触れたのを覚えてる。
嫌な光景が蘇る、あの日…あの時の…。
『……っ…どうして…っ』
涙は止まる事なく、瞳から溢れて、あの人の頬を濡らした。
《君が悪いんじゃない》
あの人はそう言って笑った。
本当は痛くて辛くて、恐いはずなのに…。
……あの人は笑ったんだ。