『忍姫恋絵巻』


「でも、才氷もどこかの鳥籠に捕らわれているの?」

「え……?」

「"自由になりたい"なんて、自由ではない人間が口にする言葉だからね」


……。
人の言葉に、敏感な人だと思った。


でも…。


「あたしもって…在政も自由じゃないって事?」


確かに在政は、"才氷も"って言った。

でも、当主なんだから、恐らく自由に出来ない事もたくさんあるんだろうな。


「そうだね、自由とは何かさえ、私には分からなくなっていたよ。でも、才氷を見ていて思った」


あたしを見ていて思った??


「行きたい所へ行き、好きなように生きる」


在政は笑顔で青空を見上げた。


「私は、この籠で生きる以外の道はないけれど、この籠の中でどう生きるかは、私の自由だと思わないか?」


そして、先程あたしがしたように、空へ手を伸ばした。



















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