『忍姫恋絵巻』


「私はこの地に生きる民に幸せを、そして才氷のようにまたここへ来たいと思えるような春風を吹かせたい」


「!!」


それは、在政の自由の形で、桜牙門の当主としての言葉だった。


「在政は、全部人の為なんだね」

「違うよ、私の為だ。たとえ、ここが私を縛り付ける籠であっても、私の生まれた故郷であって、好きな場所だからね。守りたいと考えているよ」


本当に、在政は優しい人なんだろうな。
そういいながら、結局誰かの為になってるんだから。



「もう、在政はあたしに春風を吹かせてるよ」


だって、こうして毎年あたしがここに来たいと思って来てる。温かい春の風が、桜の花びらとともにあたしに知らせてくれるから。


「それなら、私は嬉しいよ。頑張ったかいがあるからね」


そして、在政は嬉しそうに笑った。














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