『忍姫恋絵巻』
「話は…理解した。けど、あたしは修行の身ですし、徳川に仕えるに足りないですよ」
これは、誰かに仕える気はないって意思表示。
だから、断ろう。
あたしはもう、あの人以外に忠義は誓えない。
「ほう………だがお前は、伊賀一のクノイチと聞いていたが?」
春日局は不敵に笑う。
春日局は男だけど、その不敵な笑いさえ、美しさを感じる。
「伊賀一など…恐れ多い……。あたしは、未熟ですので」
だから、あたしの事は諦めて。
「何か、断りたい理由があるように見える」
「っ!!」
春日局は、何か意味深にあたしを見て笑った。
まさか、あたしの過去を知ってる??
「もっと軽く考えてはとうだ?お前は、報酬を得る、こちらは家光様を守る事ができる…。こちらとしてもお前にも、メリットがあるとは思わないか?」
春日局の提案は、合理的だ。
別に、忠義を誓うわけじゃない、等価交換だし…。