『忍姫恋絵巻』
「まぁ…そういう事なら…受けてもいいです」
「では、決まりだな」
パチンッと手を叩き、春日局はあたしに手を差し出す。
「よろしく、才氷」
「どうも、よろしくお願いします」
その手を握り、ふと思い出す。
「そういえば、どうしてあたしは拐われたんです?」
父上も知ってて、春日局も知ってたなら、普通に城に呼び出せばいいのに。
「ふっ、それは、お前の力量を見てみたくてな。赤にまんまと拐われたらしいが」
「は、はぁっ!?」
じゃあ、あたしは力試しに拐われたってこと!?
霧隠 赤が裏の支配者と言ってた意味が今なら分かる。
「ほら、大魔王…」
「赤、何か言ったか?」
「なーんも、ありません」
霧隠 赤の言葉に、春日局は視線を向けた。
やっぱ、妙なことに首突っ込んだかなぁ…。
まぁ、今さら後悔してもしょうがないか。
「では…早速家光様に会ってこい」
「!!」
いきなりか。
女将軍とか、どんなお転婆なんだろう。
絶対気が強くて、お高くとまってるに決まってる。
春日局は霧隠 赤に目配せをする。霧隠 赤は頷いてあたしの方を見た。
「案内するから」
「あぁ…頼む」
そう言って霧隠 赤について行った。