『忍姫恋絵巻』
「どこ行くんだよ」
背後から声がして、振り向く。
すると赤があたしの前の襖に手をつき、出られないように覆いかぶさってきた。
いつの間にっ…!?
「赤、起きてたんだ?」
そう言って赤から視線を逸らした。
これから出ていくなんて、きっと言ったら赤は行かせてはくれないだろうから。
ドンッ!!
「っ!!」
赤は無言であたしの手首を掴み、襖に押し付けた。
「っ!?…離して、赤!」
赤は、私を怒ったように見つめる。
その手から逃げようとしても、びくともしない。
「…………離さない」
赤の言葉は、ひどく悲しげだった。
それに驚いて、あたしは顔を上げる。
「…離したら…居なくなるだろ?」
赤はあたしの瞳を捕らえて離さない。
「……行かせない。どこにも行くな、ここにいろよ……」
赤はそのままあたしをギュッと抱きしめた。
あたしは、そこから動けなくなる。