『忍姫恋絵巻』


「これが、心の枯れた当主の治める領地だ。どうだ、酷いモノだろう」

「っ!!」


すぐ隣に、今まで感じなかった気配を感じ、あたしは横を向く。


「久しいな、服部 才氷」


そこには、同じように木に登り織田の領地を見渡す先崎がいた。


「先崎!?」


先崎に会うのは、大奥の奇襲以来だ。
敵であって、憎めない相手。


「来ると思っていたぞ。だから、ここで待っていた」

「待ってたって、あたしを?」


先崎はあたしに視線を向ける。
相変わらず、威圧的な視線だ。


「そうだ、お前を待っていた」

「聞くけど、それは敵として?それとも、味方として?」


答えによっては、ここで戦わなきゃならない。
あたしにとって織田は、全て壊すべきものだから。


「お前の言葉が、忘れられずにいた」

「それって……」


あたしが、『戦いたくない..先崎も、諦めないでほしい...』って言った言葉かな。























< 163 / 272 >

この作品をシェア

pagetop