『忍姫恋絵巻』
「これが、心の枯れた当主の治める領地だ。どうだ、酷いモノだろう」
「っ!!」
すぐ隣に、今まで感じなかった気配を感じ、あたしは横を向く。
「久しいな、服部 才氷」
そこには、同じように木に登り織田の領地を見渡す先崎がいた。
「先崎!?」
先崎に会うのは、大奥の奇襲以来だ。
敵であって、憎めない相手。
「来ると思っていたぞ。だから、ここで待っていた」
「待ってたって、あたしを?」
先崎はあたしに視線を向ける。
相変わらず、威圧的な視線だ。
「そうだ、お前を待っていた」
「聞くけど、それは敵として?それとも、味方として?」
答えによっては、ここで戦わなきゃならない。
あたしにとって織田は、全て壊すべきものだから。
「お前の言葉が、忘れられずにいた」
「それって……」
あたしが、『戦いたくない..先崎も、諦めないでほしい...』って言った言葉かな。