『忍姫恋絵巻』
「八雲家を守ると言いながら、私は怖かったのだ。守れなかった時の痛みを知るのが」
先崎の言葉は、痛いほと分かった。
あたしは、先崎のように冷静になれなくて、結局主を死なせてしまった。
「何が正しいとか、無いのかも。あたしは、結局守れなかったから」
だから、今、復讐の中でしか生きられない。
「だが、私は今、里の皆に、長い生き地獄を強いている。飢餓に、疫病に、何も出来ず、保身を優先させた結果がこれなのだ」
「先崎……。そういえば、先崎も織田に里を…」
「あぁ、里を襲われ、今や戦える者は織田の忍びとして使われている」
織田は、そこまで力があるんだ。
あの、威圧的で、利己的な傲慢な男を思い出す。
フツフツと怒りが沸き上がる。
「あいつがいたら、誰も幸せになれない」
戦もなくならないんだ。
また、誰かの悲しみを生んでいく。
「私も、その考えに行き着いた」
「え、先崎それって……」
それって、まさか織田と決別するってこと!?
お願い、そう言って…。
「八雲家、総意の元、織田に謀反を起こす」
「!!」
先崎は、真っ直ぐにあたしを見つめてそう言った。
その瞳には、迷いが無い。