『忍姫恋絵巻』
「だから、服部 才氷。お前の力も貸してくれないか」
先崎はそう言ってあたしに手を差し出す。
そんなの、取らないわけない。
先崎のような忍びの未来を思う人なら、信じられる。
「目的は同じ、断る理由がない」
あたしは笑みを浮かべて、先崎の手を握り返した。
「おーし、話は終わったな、オッサン!」
「って、アンタもいたの?」
そして現れたのは、石川五右衛門だった。
「そーだ、話がまとまったみたいだからな」
「五右衛門、アンタも織田に恨みが?」
五右衛門はたしか、オッサンに借りがあるとかなんとか言ってたっけ。
「違うな、俺はオッサンについてくだけだ」
「はぁ?織田に謀反起こすんだよ?理由はたったそれだけ?」
あたしは呆れと驚きで五右衛門を見つめる。
「オッサンは、俺の命の恩人なんだわ」
「命の恩人?」
すると、五右衛門は笑う。
「織田の偵察の仕事を引き受けた時、ヘマして八雲のオッサンに捕まったんだよ。もう、ダメかと思ったけど、オッサンは俺を匿ってくれたってわけ」
そう話す五右衛門の様子から、先崎を信頼してる事が分かった。