『忍姫恋絵巻』


「へぇー、お前にもそんな顔出きるんだな」

「!!」


突然後ろから声をかけられ、振り返る。


「五右衛門か…」


げんなりした顔で五右衛門を見る。


五右衛門に恨みはないが、正直、家光を襲った事を根に持ってる。


それに、いつも軽い感じが、どうも…いけすかない!!


「おい。俺見た瞬間にその顔はどうかと思うぞ?」

「うるさい、からかう為に来たなら、さっさと帰れば?ここは、あたしが先客」


フイッと五右衛門から視線を反らして、また月を見上げた。



「ったく、年中ふてくされた顔してるくせに、こんな時ばっかりそんな、寂しそうな顔しやがって…」

「はぁ!?って、なんで隣にくんの」


五右衛門はため息をついて、あたしの隣に立つ。


そんな、しぶしぶ傍にいますみたいな感じなら、傍にいなきゃいいのに。

それに、あたし寂しい顔なんて……。
本当に、そんな顔、してたのかな。





















< 179 / 272 >

この作品をシェア

pagetop