『忍姫恋絵巻』
「お前の考えてる事当ててやろーか」
「頼んでない」
五右衛門はニヤニヤしながら、あたしを見た。
うわ、嫌な笑顔。
のんなの、本当にもう……。
「あの、霧隠の野郎の事考えてんだろ」
「っ……だったらなに」
分かってて言ってるんだから、やっぱり五右衛門は性格悪い。
「何でアイツから離れたんだよ」
「それは……」
そんなの、決まってる。
あたしは、在政様を守れなかった時、大切な人が永遠にこの世から消える絶望と喪失感を知った。
あれほどの痛みと苦しみは、もう味わいたくない。
「巻き込まない為……」
「アイツは、強いだろ。信じてないのか、アイツの事」
「っ…信じてないんじゃない!!」
つい、声を荒げてしまった。
そんなあたしを、五右衛門は少し驚いたように見た。
信じてないわけじゃない。
むしろ、信じられないのは……。