『忍姫恋絵巻』
「信じられないのは、あたし自身だよ」
あたしが、赤達を守りきれる自信が無いんだ。
あたしは、一度大切な人を守れずに失ってる。
「人の命に、2度目はない。だからこそ、守りきれる自信が無いあたしは、彼等をこの戦いには巻き込みたくない」
あたしの好きな人である赤も、主にしたいとまた思わせてくれた家光の事も、あたしは失いたくない。
また失ったら、あたしはきっと壊れてしまう。
「何、難しく考えてんだよ」
「え?」
五右衛門はそう言って、あたしの頭をガシガシと撫でた。
「子供扱いしないで」
「はぁ?俺はお前より歳上だぞ、絶対」
ムッとして五右衛門を見上げる。
あたしより遥かに背が高い五右衛門に頭を撫でられると、子供に戻った気になる。
「何歳?」
「20になるな」
「…………」
まじか……。
本当に、あたしより歳上だったのか。
「あのな、お前はガキの割りには頭固すぎんだ」
「五右衛門は頭柔らかすぎなんじゃない?」
「おいコラ」
そう言って、あたしの頭をグリグリしようと拳を作る五右衛門から、あたしは距離を取った。
「お前だけじゃねーんだよ、相手も、お前を守りたいと思ってんじゃねーの」
「……赤も……」
あたしを守りたいって思ってる?
でも、だとしても、あたしは、赤に傷ついてほしくないから…。
「どんなに赤があたしに心を裂いてくれても、あたしは何度でも、赤を遠ざけるよ」
その為に、赤を傷つけて、あたしもまたそれに傷ついたとしても、あたしは、きっとまた氷漬けにしてでも、離れる道を選ぶ。
その覚悟は、もうしてきたんだから…。