『忍姫恋絵巻』
村を出て数刻、あたし達は石川の里を目指して、森の中を進んでいた。
「はぁっ……雲行きが怪しくなってきたね」
「体がしんどいわ…」
列から聞こえる女達の声に、あたしは頭を悩ませていた。
訓練を受けてない彼女達に、この道のりは険しい。
わかってはいたけど、予想より進みも悪いな。
「皆、ここは頑張りましょう。私たちの為に、命をかけてくれる石川様や、才氷様の為にも」
伊津菜さん……。
伊津菜さんは、皆を説得するように声をかける。
すると、皆伊津菜さんの言葉に頷いた。
「そうですね、ここで弱音を吐いては」
「才氷様だけなら、もっと早く行けたはずでしょうから…」
皆に希望が戻る。
そんな皆の姿に、あたしはホッと息を吐いた。