『忍姫恋絵巻』


「雷鳴……?」

「あぁ、紹介がまだだったね」


あたしは、首から下げた笛に口をつけた。


ピィィーッ


笛を吹くと、バタバタと雷鳴が羽音を立てて、あたしの腕に止まった。



「あたしの相棒の雷鳴、賢い子だから」


あたしは雷鳴の体を撫でながら、笑みを浮かべる。


「雷鳴は、あたし達の言葉を理解してる、だから、何かあれば雷鳴に言って」


「本当に賢いのですね。かしこまりました、才氷様もお気をつけて」


伊津菜さんは雷鳴をあたしから受け取り、胸に抱き締めた。



「うん。それじゃあ、行ってくる」

バッ!!


「…………っ」

女達を雷鳴に託して、あたしは木上を伝って、これから行く道の安全を確かめる。


森の出口に近づいた途端、ポタッと頬に水滴が当たった。


「っ、雨がっ……」


伊津菜さん達、大丈夫かな……。
心配してた通りになっちゃったな。


そんな事を考えていると、ふいに人の気配を感じた。


「!!」


あたしはすぐに木の影に隠れた。
すぐ下には、どこかへ向かっている最中の織田の軍勢がいる。


この先は……石川の里の方角??
嫌な予感がして、織田の軍勢の声に耳を傾ける。


「こっちか、忍の里は」

「信秋様は、随分と忍びに執着されておる」


「強いモノ好きは相変わらずだな。ほら、なんだったか、桜牙門の忍びも手に入れたがってたしな」


…っ!!
信秋が、石川の忍びを狙ってるんだ!!


大勢の忍が、八雲の里に出入りしたせいで、逆に石川の里が狙われた?

















< 188 / 272 >

この作品をシェア

pagetop