『忍姫恋絵巻』


「我等が当主を救えるのは、あなただけなのです!!」

「その通り、才氷様、行ってくだされ!!」


忍び達が次々に声を上げる。
そして、あたしの目の前に、一筋の道が出来た。


「あなた達っ……」


これは、石川の忍び達が開いた道だ。
身を呈して、あたしに五右衛門達を救ってと思いを託したんだ。

なら、あたしに出来ることはひとつしかないじゃん!!


「生きて、五右衛門にその元気な姿見せて…必ず」


泣きそうになるのを堪えて、あたしは石川の忍が切り開いた道をまっすぐに見つめる。


「ありがとうございました、才氷様」

「我等の思いを、どうかご当主へ」

「ご武運を、才氷様」



どれも、死を覚悟した言葉だ。

ここに残りたい、だけど……あたしには、石川の忍達の思いをもって、前に進まなきゃいけない。


「皆、必ずまたっ……会おう!!」


ダンッ!!


泣きそうになるのを堪えて、あたしは振りきるように強く地面を蹴る。



そして、一度も振り返らずに、先崎達のいる屋敷へと全速力で駆けた。




















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