『忍姫恋絵巻』


屋敷へと近づくと、すぐ近くて多くの人の気配がした。
あたしはすぐに屋敷の近くの木に姿を隠す。


そして、そこから見えたのは……。



「伊津菜……伊津菜っ!!」

「当主……いえ、先崎…様……」


胸から血を流す伊津菜さんと、それを抱き締める先崎の姿だった。


……何が、起こってるの?
伊津菜さん、あんなに血が流れて…。


「クソッ、オッサンすまねぇ。アンタの大事な女、守ってやれねーで…」


五右衛門が悔しそうに声を上げている。


「へえ、アンタが、御子柴かよ。これ以上近づくな、焼き殺すぞ」


それを守るように立つ赤の姿。


「あたしは……また、間に合わなかった?」


また、誰かを失うのか。
大切な人を失う痛みを、先崎には味合わせたくなかったのに!!



あたしは、懐刀を血がにじむほどに握りしめた。
体の中が、どんどん冷たくなっていくのを感じる。



許さない……。
また、またなのか……。


「御子柴ぁぁーーっ!!」


あたしは、冷気を纏って、御子柴に物凄い勢いで近付く。


「凍てつく、精錬の造形、氷牙!!」


懐刀に、氷の装甲を作り、長い牙の剣として御子柴に斬りかかる。


「!!」

ガキーンッ!!!


それに気づいた御子柴が、太刀を軽々と抜いて、あたしの刀とぶつかり合った。












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