『忍姫恋絵巻』


「お前っ、またあたしの大事なモノを!!」

「服部……才氷」


御子柴は、あたしを見て高揚した笑みを浮かべた。
刀をぶつけ合ったまま、あたし達はみつめあう。


「才氷……才氷か!?」


遠くで、赤の声が聞こえたきがしたが、今のあたしには、周りの声さえ耳に入らない。


ただ、目の前の相手が…ううん。
その裏で笑っている信秋が憎い!!


「凍てつく精錬の造形、氷花!!」

「クッ!!」


あたしの氷の花が、御子柴の体を突き刺そうと花開く。
それから、御子柴は瞬時に距離を取った。


「はぁっ……はぁっ…」


御子柴と距離が離れ、少し我に返る。


そうだ、伊津菜さんはっ…。



「伊津菜さん、先崎!!」


あたしは、二人にかけよる。
すると、伊津菜さんは弱々しくあたしを見つめて微笑んだ。


「あぁ……また、悲しげな顔をしていますね…」


そう言って、伊津菜さんはあたしの頬を優しく撫でた。
その手の冷たさに、あの日、あたしの手を握ってくれた温かさはもうない。

















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