『忍姫恋絵巻』
「あ、そこの人、申し訳ない」
目の前から歩いてくる男に声をかける。
「家光様を見てはいませ……」
「うわぁぁーーっ!?」
叫ばれた。
たぶん、あたしの狐の面のせいだ。
それにしたって、こんなので悲鳴を上げるなんて…。
「………」
無言で相手を見つめると、それだけで腰を抜かした。
「本当に男??たかが面でしょ?」
「く、来るなぁーーーっ!!モノノケが出たー!!」
面ごしに睨み付けると、男は、なさけない声を上げて走り去ってしまう。