『忍姫恋絵巻』


「きっと、赤まで殺しちゃう…」


この狂気を止める方法は、信秋を殺す以外にきっと無い。


まるで、底知れぬ闇の海に沈んでいくように、深くて深くて、抜け出せない。



コゴッ…


「空が……まじかよ」


五右衛門が、驚いたように空を見上げる。
空は、すぐに月を隠し、キラキラと氷の雨を降らせたからだ。


 
大気が、震えてる。
あたしの力が、怒りで大きく膨れ上がってる。



「お前は、俺と同じ化け物だ」

「そうかもね」


御子柴の言葉に、あたしは笑った。


そして、刀先を、御子柴に向ける。
力の全てをそこに集中させた。


ボワァーッ!!!


突風が吹き荒れ、冷気が木々を、大地を凍らせていく。



「服部 才氷ー!!」


御子柴は地面を強く蹴り、弾丸の如くあたしに向かってくる。それを、静かに見つめた。


「もう、逃がさない。ここで、終わり」


ダァァーーーンッ!!


術式も構わず、力の限りをぶつけた。
氷の固まりが、御子柴の上から降って、押し潰したのだ。


「おい、やったのか!?」


五右衛門の言葉に、あたしは首をかしげた。


なんだろう、手応えが無い。
もしかして、外した??


あたしは氷の礫を消し、そこを見ると、御子柴の姿はない。
それに、どこを見渡しても、御子柴の姿が無いのだ。

























< 200 / 272 >

この作品をシェア

pagetop