『忍姫恋絵巻』
「きっと、赤まで殺しちゃう…」
この狂気を止める方法は、信秋を殺す以外にきっと無い。
まるで、底知れぬ闇の海に沈んでいくように、深くて深くて、抜け出せない。
コゴッ…
「空が……まじかよ」
五右衛門が、驚いたように空を見上げる。
空は、すぐに月を隠し、キラキラと氷の雨を降らせたからだ。
大気が、震えてる。
あたしの力が、怒りで大きく膨れ上がってる。
「お前は、俺と同じ化け物だ」
「そうかもね」
御子柴の言葉に、あたしは笑った。
そして、刀先を、御子柴に向ける。
力の全てをそこに集中させた。
ボワァーッ!!!
突風が吹き荒れ、冷気が木々を、大地を凍らせていく。
「服部 才氷ー!!」
御子柴は地面を強く蹴り、弾丸の如くあたしに向かってくる。それを、静かに見つめた。
「もう、逃がさない。ここで、終わり」
ダァァーーーンッ!!
術式も構わず、力の限りをぶつけた。
氷の固まりが、御子柴の上から降って、押し潰したのだ。
「おい、やったのか!?」
五右衛門の言葉に、あたしは首をかしげた。
なんだろう、手応えが無い。
もしかして、外した??
あたしは氷の礫を消し、そこを見ると、御子柴の姿はない。
それに、どこを見渡しても、御子柴の姿が無いのだ。