『忍姫恋絵巻』


「あの時もお前、自分がつけた傷を見て、泣きそうになってたろ。俺は、そんなお前を見たくないんだよ、才氷」


「せ……き……」


「俺は、お前自身にも才氷を傷つけさせない。守るから、俺を傍に置けよ」


それは、切なげで、赤も泣いてるんじゃないかって思うほどに声が震えていた。


「赤は、どうしてあたしにそこまで…」

「忘れたのか?俺は、才氷が好きだからだ」


そうだ。
何度も、赤はあたしに好きだと言ってくれた。


それが、あたしを鬼や化け物になるのを止めてくれる抑止力。


「才氷を迎えに来た。家光様も待ってる、一緒に織田と戦おう」

「家光……」


まるで、あたしの太陽のような存在。


何も言わずに離れたのに、それでもあたしと戦おうとしてくれるの??


















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