『忍姫恋絵巻』
「……その言葉が、聞きたかった」
「!!」
目の前に、燃えるような赤い髪が見えたかと思うと、ガバッと赤に抱き締められた。
「お前、俺の事氷らせていなくなりやがって…」
「はは……」
氷らせたっていうか、筋肉を動かせなくしたっていうか…。
まるで、拗ねた子供のような言い草に、少し笑ってしまった。
「もう絶対、離さねー」
「ん、あたしも……離れたくない」
瞳を閉じて、赤の体温を感じる。
赤の体温は、いつの間にか氷つけてしまったあたしの心まで溶かしていくようだった。
「お前達は、まるで昔の私達のようだ」
先崎は、あたしと赤を見て笑みを浮かべる。
「私もかつて、織田にこの里を奪われた時、1人で復讐を計画し、動いていた。しかし、それが信秋の耳に入り、追われてな。傷を負った私は、その時に1人の村娘に救われた」
「それが、伊津菜さん……」
あたしの声に、先崎は頷いた。
「あからさまに怪しい私を、甲斐甲斐しく看病し、あげく、復讐に囚われた私の心まで救ってしまった」
あたしにとっての赤が、そして家光がそうだったように、先崎の太陽は、伊津菜さんだったんだ。