『忍姫恋絵巻』
「自分の命が終わるその時まで、私を想って……私は、何を伊津菜に返せたのだろうな…」
愛しむように、冷たくなった伊津菜さんの頬を撫でて、先崎は抱き締めた。
「せめて、八雲の里を…いや、この日の本を平定する事で、恩を返す。戦に泣く人間が、いなくなるように」
それは、まるで伊津菜さんに誓うように告げられた。
「それは、俺も賛成だな。俺達忍びが、血に染まる生き方はもう飽きた。もっと、自由に生きられる世の中作ろうや」
五右衛門は先崎の肩に手を置いて笑みを浮かべる。
「自由に……」
『私から見ると、君は自由な鳥のようだよ』
『才氷と一緒に……自由に……なりたい』
そうだ、在政様もよくそう言っていたっけ。
自由に、なりたいって……。
「そんな世を、作れたら……」
きっと、在政様も喜んでくれるのだろうな。
それに家光だって、家の言いなりではなくて、自由に、恋をして、生きられる?
「ここには、4人の忍びの当主がいるんだ、出来ねー事なんて無いんじゃないのか?」
赤の言葉に、あたし達は顔を見合わせる。