『忍姫恋絵巻』
「へー、そんな顔も出来んのな。ちょっと可愛い所もあるじゃねぇか」
「おい、才氷は俺のだぞ?」
赤は五右衛門の四海に入らないようにあたしを抱き抱えた。
「はぁ!?ちょ、降ろしてよ赤!!」
あたし、なんで抱き抱えられてんの!?
というか、追われてるっていうのに、なんていう緊張感の無さ。
「お前達、緊張感の欠片もないな」
先崎はため息をついて、五右衛門の首根っこを掴んだ。
「ぐえっ、オッサン、それはねーよ」
「若者をからかうな。ほら、私達はこっちだ。それではまた会おう、二人とも」
ザッ!!
すると、先崎は五右衛門の首根っこを掴んだまま、崖の下を降りていった。
「ぎゃぁぁぁああっー!!」
五右衛門の叫び声と共に。
「容赦ないな、先崎のオッサン」
「先崎……」
なんというか、五右衛門、御愁傷様……。
先崎もなかなか強引な所があるんだな。