『忍姫恋絵巻』
ポタポタと水滴が髪や服から滴り落ちる。
そこを冬の風が通りすぎると、体が震えた。
「赤、これ以上は進めない。暗くなってきたし、夜の森は知らないと出てこれなくなる」
「そうだな。あそこに洞窟がある、そこで一夜を明かそう」
赤が指差したのは、大きな洞窟だ。
あたし達はそこで一晩を明かす事になった。
「よいせっと」
ボワッ!!
赤は集めた木々の枝に手を翳すと、炎をつけた。
「赤、霧隠って、炎術の一族だったんだっけ」
バチバチと燃え始める炎を見つめながら、ふと尋ねる。
そういえば、赤が力使ってるの、あんまり見た事なかったな。しいて言うなら、あの大奥でくらいかも。
「おー、言ってなかったっけ?」
赤は苦笑いしながらあたしの隣に胡座をかいて座った。