『忍姫恋絵巻』
「まぁ、あんまし人前で使わねーからな」
赤は自分が灯した炎を見つめながらそう言った。
その目が、すこし苦しそうなのは気のせい??
「術式を介さないで力使ってるのと、関係ある?」
本来なら、あたし達は術式に忠実に力を使う。
まぁ、あたしも術式通り越して暴走させたりしてたけど。
むしろ、術式がいらないって事は、それだけ強い力を持ってるって事だ。
「やっぱ、分かるよな。そうだよ、俺の力は術式の型に当てはめて使えない程に強くて、自分でも抑えきれねーんだ」
「!!」
赤は自分の掌を見つめてそう言った。
「昔、それで自分の里を焼いちまってな…」
「え……?」
自分の里を、自分の力で焼いた??
赤がそんな過去をもってたなんて、あたし全然知らなかった。
「今はもう元通りなんだけどな、それからトラウマみたいになってる。だから、あんまし、力は使わねーようにしてんだ」
「…………」
あたしは、何を言ったら、言ってあげたらいいんだろう。
簡単な慰めは、赤を傷つける。
赤は、あたしに優しくしてくれるのに、あたしはどうやってそれを返せば……。
そうだ、赤はたしか、よくこうして……。
あたしは赤に身を寄せて、そっと抱き締めた。
「才氷……?」
「う、うまく言えないけど……」
あたしは、赤がしてくれて安心した事を赤にかえそう。
ただ、傍にいて抱き締めるだけでも、心は温かくなる。