『忍姫恋絵巻』
「なぁ、才氷」
「うん……」
抱き締める腕を緩めて、赤はあたしの頬に手を伸ばす。
あたしを見つめる瞳の奥に、くすぶる熱を見つけた。
「もう、離れられないように、俺を才氷の一部にしてくれないか」
「でもあたしは……」
桜牙門を、在政様の事を解決させなきゃ、何も望めない。その先の未来を、想像できないんだ。
心が、時があの日から止まってしまったから…。
「分かってる。才氷は、在政様の事を二の次に出来ないんだろ」
「ごめん……」
赤には、何でもお見通しなんだ。
「でもさ、俺は……才氷のその過去も含めて、才氷の傍にいたい。その使命でも、復讐でも、一緒に背負ってやる。そう、覚悟決めて才氷を追ってきたから」
「あたしと一緒に、この道を進んだりしたら……」
また、あたしのせいで誰かを巻き込むかもしれない。
そんな考えが、一瞬頭をよぎる。