『忍姫恋絵巻』


「なぁ、才氷」

「うん……」


抱き締める腕を緩めて、赤はあたしの頬に手を伸ばす。
あたしを見つめる瞳の奥に、くすぶる熱を見つけた。



「もう、離れられないように、俺を才氷の一部にしてくれないか」


「でもあたしは……」


桜牙門を、在政様の事を解決させなきゃ、何も望めない。その先の未来を、想像できないんだ。


心が、時があの日から止まってしまったから…。


「分かってる。才氷は、在政様の事を二の次に出来ないんだろ」

「ごめん……」


赤には、何でもお見通しなんだ。


「でもさ、俺は……才氷のその過去も含めて、才氷の傍にいたい。その使命でも、復讐でも、一緒に背負ってやる。そう、覚悟決めて才氷を追ってきたから」


「あたしと一緒に、この道を進んだりしたら……」


また、あたしのせいで誰かを巻き込むかもしれない。
そんな考えが、一瞬頭をよぎる。






























< 214 / 272 >

この作品をシェア

pagetop