『忍姫恋絵巻』
翌日、あたし達は村人に扮して、近くの村で物資を調達していた。
「それ、付けてくれてるんだな」
「え、う、うん」
あたしの髪にさされた、椿の簪を見て、赤は嬉しそうに笑った。
赤にもらった簪だし、こんな時くらいしかつけられないから…。
赤に喜んでもらえるような気がして、つい髪にさしてた。
チャリ……。
簪を愛しそうに指で撫でる赤に、胸がドキドキとうるさい。
赤に、この胸のドキドキがバレてしまいそうで恥ずかしい。
それに、急に椿の簪つけたりして、赤はどう思ってるかな。
「やっぱり、才氷に似合ってる」
「っ……」
そんな、優しい笑顔は反則だ。
こんなに、自分の気持ちが抑えられないのは初めてかもしれない。
赤と一緒に生きるって思ってから、次から次へと、赤とこうなりたい、してあげたいとか、欲が沸いてきてしょうがない。