『忍姫恋絵巻』
「あの……」
二人の微妙な空気に、戸惑っていると、ふいに後ろから声をかけられた。
「私たち…ですか?」
振り替えると、50代半ばくらいの男性が、あたしを真っ直ぐに見つめていた。
こんな村に知り合いなんているわけがないはずだけど…でも何だろう、この人…。
『私は、結局在政様を守る事は出来なかったのです。せめて、服部様に託されたあの方の願いを叶えたい』
「!!まさか、あなたは……小次郎殿!?」
桜牙門の参謀を勤めていた、在政様の家臣だ。
あの時、あたしと一緒に民を逃がすために動いた同胞。
「やはり、才氷様でしたか!よく、ご無事で……はい、私が清田 小次郎でございます」
涙を浮かべながら深々と頭を下げる小次郎殿に、あたしまで泣きそうになった。
まさか、こんな所で会えるなんて……。
「才氷、この人は……?」
「小次郎殿は、桜牙門の参謀をしていた、在政様が最も信頼していた家臣。まさか、また会えるなんて思ってもみなかった……」
不思議そうな赤にそう説明し、あたしは小次郎殿の目の前で片膝をついて頭を下げた。