『忍姫恋絵巻』
「ご無事で本当に良かった……」
駄目だ、気持ちがいっぱいいっぱいで、言葉が出てこない。
あれから、桜牙門所縁の人間には会えて無かった。
桜牙門の民という事が知られれば、信秋に一人残らず殺されるかもしれない。
だから、あたし達はお互いに連絡を取らず、生き延びる事だけを最優先にした。
「才氷様、我らは、この時をどれ程に待ちわびたか…」
「我らって……」
すると、村人達がワラワラとあたし達の周りに集まってくる。そして、一斉に頭を下げた。
「ここにいるのは、全員桜牙門の民にございます」
「っ!!」
桜牙門の民達!?
ここに、こうして生き延びていてくれたんだ……。
「いつか、桜牙門の懐刀を持った才氷様が現れた時は、今一度、桜牙門の名の元、在政様の信念に従い、立ち上がる覚悟でここまで生きて参りました」
「小次郎殿…皆……」
あの時から、戦ってきたのは、皆も同じだったんだ。
それが、すごく嬉しい。
それだけ、皆が在政を慕っていたって事だから。