『忍姫恋絵巻』
「才氷様、私たちはまたあの桜舞う、桃源郷へ帰りたいのです」
「在政様の信念の元、戦いましょう」
皆の必死な声に、心が震えた。
ずっと、一人だと思ってた。
この懐刀が…在政様があたしをここへ導いてくれたの?
「才氷様、桜牙門の兵も、皆とはいきませんが生き残っております」
「他の村にも逃げた桜牙門の兵を探しましょう」
桜牙門がまた、もう一度あなたの名の元に立ち上がろうとしています。
在政様……。
あたしは瞳を閉じて、懐刀を胸元から取りだし、そっとその鞘を抜き去る。
「この懐刀が、あたし達を繋いでくれてる」
なら、今一度桜牙門も再興を目指せる。
在政様の大切な場所と民。
「あたし達の、大切な居場所をもう一度取り返しに行く覚悟は出来てる?」
あたしは、静かに問う。
ここからは、きっと命がけになる。
でも、もう自分だけが犠牲になるとか、そんな考えは捨てた。
「あたしは、桜牙門の民と、もう一度あの桜を眺めたい」
共に戦う、共に生きるには、お互いに、失うかもしれない覚悟をしなくちゃいけない。
でもそれは、皆が幸せになれる可能性と希望がある選択なんだと、そう、赤と家光が教えてくれたから……。