『忍姫恋絵巻』
「雷鳴っ!!」
あたしは、走りながら名前を呼ぶ。
すると、一羽のフクロウが、空の上から鳴く。
「家光は!?」
ホウホーウッ
雷鳴はすぐに家光がいるであろう方向へ飛び始める。
あたしは、木の上を飛び、雷鳴の後を追った。
「ここは??」
しばらくして、雷鳴は城を出たすぐ近くの古い倉の上をくるくる回って飛び始める。
「ここに、家光が…」
こんな、城の外に家光が来るはずない。
だとしたら、拐われたんだ。
「許さない」
あたしは狐の面を被る、その姿はまるで妖狐だ。
着物を脱ぎ捨て、下に着ていた装束姿になる。
そして、桜の紋が彫られた懐刀を抜いた。
白く美しい白刀が、月光に照らされて、淡く輝く。