『忍姫恋絵巻』


バンッ


あたしは、倉の扉を開け放った。
すると、そのには十数人の男たちがいて、あたしをいっせいに振り返る。


そして、その中心には、縄に手首を吊らされ、ぐったりとしている家光がいた。



「っ、家光!!」


目の前に広がる光景に、悲鳴に近い声が出た。



「……………あ…ぁ…」

あの日の光景、あの人の姿と家光の姿が重なって見える。


『…才氷………行くんだ……。じきに……私の生死を確かめに、奴等はここへ…戻って……くる……』


彼はあたしに、家宝の懐刀を差し出した。


『……生き…る…んだ……』


彼は必死にあたしの肩を掴む。


『何を言って…あたしは、最期まであなたの傍にいます!!』


あたしは、あの人に抱きついて泣いた。


『私の……分ま…で…』

あの人が何を言いたいのか、分かってた。


それでもあたしは…それを素直に受け入れるほど、割りきれるほどの気持ちであの人の傍にいたんじゃないから…。














< 38 / 272 >

この作品をシェア

pagetop