『忍姫恋絵巻』
バンッ
あたしは、倉の扉を開け放った。
すると、そのには十数人の男たちがいて、あたしをいっせいに振り返る。
そして、その中心には、縄に手首を吊らされ、ぐったりとしている家光がいた。
「っ、家光!!」
目の前に広がる光景に、悲鳴に近い声が出た。
「……………あ…ぁ…」
あの日の光景、あの人の姿と家光の姿が重なって見える。
『…才氷………行くんだ……。じきに……私の生死を確かめに、奴等はここへ…戻って……くる……』
彼はあたしに、家宝の懐刀を差し出した。
『……生き…る…んだ……』
彼は必死にあたしの肩を掴む。
『何を言って…あたしは、最期まであなたの傍にいます!!』
あたしは、あの人に抱きついて泣いた。
『私の……分ま…で…』
あの人が何を言いたいのか、分かってた。
それでもあたしは…それを素直に受け入れるほど、割りきれるほどの気持ちであの人の傍にいたんじゃないから…。